RASとは?目標達成や学習効率を加速させる脳のフィルター機能を解説

「やりたいことがあるのに集中できない」
「何度学んでも成果につながらない」

そんなもどかしさを誰でも一度は感じたことがあるのではないでしょうか。

実はその背景には、脳が情報を選別するRAS(脳幹網様体賦活系)の働きが深く関わっています。

本記事では目標達成・学習効率・行動力に影響を与えるRASの仕組みと、認知科学の視点に基づいた活用法・注意点を具体的に解説します。あなたの意識の向け方次第で考え方は大きく変わるので、ぜひ参考にしてください。

RAS(脳幹網様体賦活系)とは?

RAS(脳幹網様体賦活系)とは、脳幹にある情報処理の中枢で五感から入る膨大な情報の中から自分にとって重要なものだけを脳に届けるフィルター機能となります。

  • 新しい車を買おうと思ったら街中で欲しい車ばかり目につく
  • 引っ越しを考え始めると不動産広告ばかりが目に入る
  • 騒がしい場所でも自分の名前だけは聞こえる

上記はRASの働きによるものであり、こうしたフィルター機能の働きにより、目標達成・集中力・行動選択が無意識に行われています。

逆に「やりたいことが分からない」などの悩みは、あなた自身の能力や意思の問題ではなく同様にRASの働きによる場合もあります。

この脳の仕組みを理解しポジティブに「これは大事」と意識することで、RASの働きによりなりたい自分へより1歩近づけるでしょう。

脳のRASがもたらすメリット

RASの最大のメリットは、「目標達成に必要な情報を自然に拾いやすくなる」ことです。

「転職したい」と意識した瞬間から、SNSや広告で転職関連の情報ばかりが目に入るようになります。これは、RASが「今の自分に必要」と判断した情報を無意識に取捨選択しているからです。

さらに、思考が整理されることでアイデアが生まれやすくなり、学習効率も上がるという副次的なメリットも得られます。

情報過多の現代において、RASはまさに「脳の検索エンジン」として、自分の可能性を最大限に引き出すシステムと言えるでしょう。

目標達成に必要な情報を収集できる

RASは、あなたが「これは大事だ」と意識したことに関係する情報だけを脳が優先して見せてくれる仕組みです。たとえば「独立して起業したい」と考え始めた瞬間から、SNSの投稿や人の会話、ニュース記事などに「起業」「フリーランス」といった情報が自然と目に入ってくるでしょう。

これは偶然ではなく、RASが自動的に関連情報を選別している証拠です。この仕組みを効果的に活用すれば、ただ待っているだけでも必要なヒントや行動のきっかけが集まりやすくなり、目標達成のスピードが上がります。

創造的な発想が生まれやすくなる

RASの働きは、単に情報を選別するだけではありません。一見関係のない情報同士を結びつけ、新しい発想を生み出す土台にもなるのです。

たとえば「もっと自由な働き方をしたい」と意識することで、マーケティングの知識とライティングスキルを組み合わせて副業を始めるといった自分だけの働き方のアイデアが浮かぶことがあります。

急な思いつきで、解決策が見いだせたりするのもRASが潜在的な情報を引き出し、発想力を高めているからです。

自分の意識と外の世界をつなぎ、普段なら見逃してしまうようなヒントに気づけるのも、RASが創造的な思考を行っているためとなります。

学習効率を高められる

RASは、「自分にとって重要な情報」を自動で選別し、優先的に意識へ上げるフィルター機能があるため学習効率も高められます。

資格試験の勉強を始めると、普段は気にも留めなかった広告・SNSの投稿・同僚の会話の中から「試験」や「勉強法」といった関連ワードが自然と目に入りやすくなるでしょう。

これはRASが「この情報は今の自分に必要」と判断し、膨大な情報の中から学習に役立つものを選び出しているためです。

この繰り返しの情報接触によって神経回路が強化され、知識が記憶として定着する手助けをしています。また、不要な情報がシャットアウトされ集中力も持続しやすくなり、結果として学びの質が高まるでしょう。

RASは「情報の選別・集中の持続・記憶の定着」という3つの観点から、学習を根本的に支える脳の仕組みでなのす。

脳のRASを活用する際に押さえておくべきデメリット

RASは非常に優れた情報フィルター機能を持っていますが、使い方を誤るとデメリットにもなります脳が「重要」と認識した内容はポジティブ・ネガティブを問わず選別対象のため、偏った情報だけを集めたり、誤った前提で行動するリスクが伴います。

「自分はダメな人間だ」と思い込んでいると、それを裏付けるような失敗体験や否定的な情報ばかりを拾ってくるでしょう。

その結果、思考の視野が狭まり、可能性を自ら閉ざしてしまう恐れがあります。RASは目標達成に役立つ一方で、誤った認識を強化してしまうリスクも持ち合わせていることを理解し活用してください。

スコトーマ(心理的盲点)が生じる

RASは、脳が膨大な情報の中から「自分にとって重要なもの」だけを選び出して意識に上げるフィルター機能を担っています。この働きによって、関心のない情報や自分の価値観に合わないものは、無意識のうちに排除されてしまうのです。

一見便利な仕組みですが、大切な情報すら認識されずスコトーマ(心理的盲点)が生じる原因にもなります。

「自分にはリーダーシップがない」と思い込んでいる人の場合、過去の成功体験や他人からの評価といったポジティブな情報がRASによって遮断され、自分の強みに気づけなくなるでしょう。

これは、「自分には向いていない」という思い込みが情報選別の基準になっているからです。

スコトーマは無意識に形成され、時間とともに自動的に強化される傾向があります。その結果、選択肢や可能性を狭めてしまう恐れもあるのです。スコトーマを外すためにも、自分の信念や前提を定期的に見直してください。

ネガティブな情報を集めてしまう可能性がある

気分や思考のクセが、私たちの情報の受け取り方に大きな影響を与える場合があります。

物事を悲観的に捉えがちな人は、無意識のうちにネガティブな出来事や言葉ばかりを発しています。

これは、RASが「今の自分にとって重要」と判断したネガティブな情報を優先的に引き上げた状態です。ネガティブ思考に偏っていると、それに関連したマイナス情報ばかりが集まりやすくなります

結果として、現実以上に自分を悪く捉え自己肯定感が下がっていく悪循環に陥ります。

このような状態を防ぐためには、普段から自分の思考のクセや意識の向け方に気を配らなければなりません。

意識の設定・多角的な情報収集次第で、RASが集める情報も大きく変わってくるのです。

過度な執着を生む要因となる

RASは一度「重要」と認識した情報を繰り返し意識に上げる特性があるため、ある特定の目標や願望に対して過度な執着を引き起こす可能性があります。

「年収を絶対に上げなければならない」という強い意識を持つ人の場合、それに関連する情報ばかりを追い求め周囲との比較や焦燥感が募っていくでしょう。

このように、目標設定が極端すぎるとRASがバランスを欠いた情報選別を続け視野が狭まるリスクがあります。成長に向けて集中力を高めるには有効な仕組みですが、柔軟性を失うと「本当に大切なもの」も見落としてしまうかもしれません。

脳のRASを活用して目標を達成する3つのポイント

RASは、目標を達成するための行動を後押ししてくれる強力な仕組みです。しかしその力を最大限に引き出すには、脳に「これは本当に重要な目標だ」と認識させることが大切です。

なんとなくの目標設定ではRASは反応せず、情報の選別も曖昧になります。

「もっと稼ぎたい」という漠然とした願望ではなく、「年収を100万円上げたい。そのために副業で月に10万円稼ぐ」という明確かつ具体的なゴールを設定しましょう。この明確化によりRASは自動的に関連情報を拾い始めます。

本章では、RASを最大限に活かすための3つのポイントを解説します。

自分が本当にやりたいことを知る

RASを効果的に働かせる第一歩は、「自分が本当にやりたいこと」を具体化してください。

RASは重要だと認識した情報だけを選んで脳に届けるため、心から望んでいない目標では情報選別が機能しにくいからです。なんとなく転職したいという動機では、RASは十分に反応しません。

逆に、「自分は○○な働き方がしたい」と具体的な動機があれば、自然と関連する選択肢や人脈に気づけるようになります。

つまり、RASは「強い思い」を前提に動き出す装置なのです。

世間体や他人の期待ではなく、自分の感情や価値観にフォーカスして、純粋な願望を言語化していくことでなりたい本当の自分へ近づけるでしょう。

理想の自分を具体的にイメージする

RASを効果的に活性化させるには、「理想の自分像」をできる限り具体的にイメージしてください。

信頼される人になりたいという曖昧な願望ではなく、具体的に「週に1回プレゼンを任され、周囲から信頼されている自分」といった詳細なイメージをするといいでしょう。

RASはイメージされた自分像を現実化するための材料として、環境や出来事にアンテナを張り始めます。映像化には「いつ・どこで・何をしているか」まで思い描いてください。

抽象的な目標は脳にとって処理すべき情報として認識されにくいという特性を理解し、映像化しRASの能力を発揮していきましょう。

明確なゴールを設定する

理想の自分のイメージを描いたら、次に具体的で明確なゴールを設定してください。

ダイエットしたいという思いだけはRASにとってはまだ情報不足です。

「3か月後までに5kg減らし、週3回の運動を習慣化する」という具体的な数値・期限・行動を含んだゴールにしましょう。具体化したゴール設定を行動の起点としてRASは必要な情報や選択肢を拾い始めます。

曖昧な目標ではRASはどこに焦点を当ててよいかわからず、自分が思い描くゴールへの到達ができません。目標が具体的であればあるほど、脳は実現すべき現実として処理を始めるのです。

脳のRASを強化するおすすめの方法とは?

RASを効果的に働かせるには、目標を明確にするだけでなく具体的に何を考え・どんな視点で物事を見るかがRASの働きに直接影響します。

RASは「これは重要だ」と判断した対象に注意を集中させますが、その判断基準は日々の生活習慣や思考に左右されます。睡眠不足や慢性的なストレスがあると、注意力が散漫になりRASも本来の力を発揮できません。

集中力を高め、前向きな意識状態を維持できれば、RASは目標達成に必要な情報を効率よくキャッチするようになるでしょう。

本章では、コーチングの4つの観点からRASを強化する実践方法を解説します。日常を少しずつ整えることで、脳の働きも変わっていくはずです。

生活習慣を見直す

RASの働きを安定的に発揮させるには、身体と脳の土台である生活習慣を整えてください。

睡眠不足や栄養の偏り、慢性的なストレス状態では脳の判断力や集中力が低下しRASの選別機能も鈍ります。

十分な睡眠をとることで記憶の定着が促進され、RASが拾う情報の精度も上がります。反対に、疲労が蓄積したまま放置すると無意識にネガティブな情報ばかりに反応してしまう可能性もあるでしょう。

食事・運動・休養といった基本的な生活習慣を整えることは、RASの情報フィルターをクリアに保つ最もシンプルで効果的な方法です。

目標達成のスタートは、生活の見直しから始まることを意識してください。

集中力を高める

RASは、自分にとって重要な情報に注意を向けるフィルター機能ですが、集中力が低い状態ではその精度が著しく落ちます。

スマホの通知が頻繁に鳴る環境では、脳が次々と通知の刺激に反応し本来意識すべき目標から注意が逸れるでしょう。

集中できる環境を整えることで、RASが選ぶ情報の質も向上し行動も的確になります。1つの作業に没頭する時間を意識的に確保する工夫がRASの働きと連動し、集中力が高まります。

具体的には、作業前にタスクを明確化し時間を区切って取り組む「ポモドーロ・テクニック」なども効果的です。集中力を高める工夫ができれば安定した成果が得られ目標達成ができるでしょう。

イメージトレーニングを行う

イメージトレーニングは、RASにイメージした情報が重要だと認識させる有効な手段です。

脳は実際の体験と鮮明なイメージを区別しにくいため、理想の状態を繰り返し想像することであたかもそれが現実のように捉え始めます。

プレゼン前に説得力のあるプレゼンを堂々と話す自分を何度もイメージすると、RASは人前で話すことは自分にとって重要と認識し、関連する情報や行動を選ぶでしょう。

意識のすり込みが情報の選別を変え行動の質にも影響するのです。毎朝数分、静かな場所で理想の自分や目標達成後の姿を具体的にイメージする習慣をつけることでRASを鍛える最もシンプルで効果的な実践法になります。

認知科学に基づいたコーチングを受ける

RASを的確に活用するには、自分一人での気づきだけでは限界があります。効果的な手法として、認知科学に基づいたコーチングを受けることです。

認知科学コーチは、脳の仕組みに沿った質問やフィードバックを通じて本人の中にある本当に大切な目標・無意識の思い込みを明らかにしてくれます。

漠然とした不安やモヤモヤを抱えている場合でも、対話を通して思考を整えRASが働く状態を意図的に作り出します

また、RASの誤作動を引き起こすスコトーマ(心理的盲点)にも熟知し、正しい導きにとり考え方や行動を変えていくことができるのです。科学的根拠に基づいた支援は、自己流では得られない突破口になるでしょう。

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脳RASを正しく使えば目標達成はより早くなる

脳RASは、意識の焦点を変えるだけで行動や成果に大きな影響をもたらす強力な仕組みです。正しく使えば、必要な情報が自然と集まり集中力や行動力も高まります。

本記事で紹介した明確な目標設定・具体的なイメージ・生活習慣の見直しといった工夫を取り入れてください。

導入後はRASが目標達成を加速させるツールとして機能し始めますもし今、思うように進めないことがあるならそれはRASの使い方を変えるサインかもしれません。

今日から意識の向け方を変え、理想に近づく一歩を踏み出してみてください。