キャリア形成に迷ったときに耳にする「キャリアコーチング」。
興味はあるものの、転職エージェントやキャリアカウンセリングとの違いが分かりにくく、実際にどんな効果があるのか疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
本記事では、キャリアコーチングの特徴やメリット・デメリットを整理し、どんな人に向いているのかを現役コーチの視点から分かりやすく解説します。キャリアの選択肢を広げたい方はぜひ参考にしてください。
キャリアコーチングとは?
キャリアコーチングの基本を押さえ、他のサービスとの違いを整理していきます。
キャリアコーチングとは、専門のコーチが対話を通じて本人の価値観や強みを引き出し、望むキャリアの方向性を明確にするサポートです。
転職や昇進といった目先の選択肢だけでなく、人生全体を見据えたキャリア設計を重視するのが特徴です。
キャリアコーチングの特徴
キャリアコーチングは、単なる転職支援やスキル習得のサポートとは大きく異なります。最大の特徴は、クライアントの本音を引き出し、自己理解を深めることに重点を置く点です。
コーチは表面的な目標にとらわれず、質問やフィードバックを通じてクライアント自身が本当の価値観に気づくよう導きます。
さらに、キャリアコーチングは「目の前の転職や昇進」だけをゴールにしません。人生全体を見据え、仕事・家庭・学び・健康など複数の側面からキャリアを考えることを重視します。
たとえば「子育ての時間を大切にしながらも専門性を磨きたい」という複雑なニーズを整理し、本人が納得できるキャリアの形を見つけ出すことが可能です。
特に30代以降の方は役職や家族の状況など複数の要素を抱えるため、改めて「どう生きたいか」を考えるきっかけとしてキャリアコーチングが大きな価値を持つのではないでしょうか。
キャリアコーチングと転職エージェントの違い
転職エージェントとキャリアコーチングは混同されやすいですが、役割は明確に異なります。エージェントは企業と人材をマッチングすることが目的で、求人紹介や選考対策を中心に行います。
たとえば「営業経験5年以上」「英語スキル必須」といった条件を満たす人材を探す企業に対して、候補者を紹介するのが仕事です。求職者にとっても「どんな求人があるか」をすぐに知れるメリットがあります。
一方でキャリアコーチングは求人を扱いません。代わりに「自分は営業を続けたいのか」「将来はどんな働き方をしたいのか」といった本人の内側にある価値観や希望を深掘りすることを重視します。
短期的に転職を決めたい場合はエージェントが有効ですが、「今後10年のキャリアをどう築きたいか」という長期的なテーマを考えるならコーチングが適しています。実際に、エージェントを利用して転職したものの「思っていた働き方と違った」と後悔するケースも少なくありません。
キャリアコーチングを併用すれば、転職の前に自分の軸を整理でき、より納得度の高い選択が可能になるでしょう。
キャリアコーチングとキャリアカウンセリングの違い
キャリアカウンセリングは心理的な不安や悩みを傾聴し、安心感を得ることを目的としている一方、キャリアコーチングは、「これからどうなりたいか」「そのために何をするか」という未来に焦点を当てる点が大きな違いです。
具体的に、「3年後に管理職を目指したい」といった希望があるとすれば、それに必要なスキルや行動計画を策定します。
つまり、過去や現在の悩みを癒やすのがカウンセリング、未来への行動を後押しするのがコーチングといえるでしょう。なお、両者は相反関係ではなく、安心感を得たいならカウンセリング、次の一歩を踏み出したいならコーチング、と補完関係にあります。
キャリアコーチングを受けるメリットとは?
次は、キャリアコーチングを受けることで得られる効果を具体的な事例とともに解説します。
キャリアコーチングは単なる相談にとどまらず、自己理解や長期的なキャリア形成を支援します。プロの視点を取り入れることで、自分一人では気づけない可能性を発見できるのが大きな魅力です。
自己理解を深められる
キャリアコーチングの中心は、自分の価値観や強みを言語化することです。普段は意識していない思考パターンや無意識の前提をコーチとの対話で引き出すことで「本当にやりたいこと」が明確になります。
自己理解が進むと、転職や異動の判断に迷ったときでも「これは自分の価値観に合っているか」という基準で選べるようになります。結果として、意思決定に一貫性が生まれ、キャリアに対する迷いや不安が軽減されるでしょう。
長期的かつ具体的なキャリアプランを構築できる
キャリアコーチングは短期的な転職活動だけでなく、中長期的なキャリア設計を支援する点に強みがあります。
たとえば「今は現場で経験を積みたいが、5年後には管理職を目指したい」「将来的には独立を視野に入れている」といった目標を整理し、必要な経験やスキルを逆算して行動計画に落とし込みます。
実際のセッションでは「半年後に資格を取得する」「1年以内にプロジェクトリーダーを経験する」といった短期目標を設定し、最終的な長期ゴールへつなげる設計を行う流れです。仕事だけでなく、家庭や趣味とのバランスを考慮した計画を立てられるのも大きな特徴といえるでしょう。
プロの視点から客観的なアドバイスを得られる
自分一人で考えていると、過去の経験や周囲の価値観に縛られがちです。コーチは第三者の立場から質問やフィードバックを行い、新たな視点で可能性を広げてくれる存在です。
こうした視点は、自分だけでは気づきにくいものですが、プロのコーチが客観的にフィードバックをくれることで新しい選択肢を検討でき、キャリアの幅が広がっていくでしょう。
やりたい仕事や向いている仕事が明確になる
「自分にはどんな仕事が合っているのか分からない」という悩みは多いものです。
キャリアコーチングでは、過去の経験や興味を整理しながら、「やりたいこと」と「得意なこと」が重なる領域を明確にします。その結果、転職やスキル習得の方向性が定まり、迷いの少ない意思決定が可能になります。
さまざまな悩みに対してサポートしてもらえる
キャリアコーチングは転職や昇進といった課題だけでなく、モチベーション低下や将来の不安など幅広いテーマに対応できます。
一人で考え込むよりも、コーチに話すことで視点が整理され、必要な行動が見えてくるでしょう。仕事とプライベートを両立したい人や、キャリアチェンジを考えている人にとっても有効な手段です。
キャリアコーチングのデメリットとは?
キャリアコーチングは有益ですが、どんな人にも常に最適とは限りません。費用やサービス範囲、コーチとの相性は事前に理解しておく必要があります。
費用が高額になりやすい
キャリアコーチングは数万円から数十万円と、まとまった投資が必要になるケースが多いです。数か月単位で継続するプランでは金額が大きくなり、始めにくい側面があります。
短期間で方向性が固まり「無駄な転職をしなくて済む」「望まない環境で消耗する期間を減らせる」といった成果が得られれば、結果的に費用対効果は大きいとも考えられます。目的と予算を明確にして検討しましょう。
求人の紹介は受けられない
転職エージェントとは異なり、キャリアコーチングでは求人を紹介しないため、「すぐに転職したい」「具体的な求人情報を知りたい」人には不向きです。
しかし、企業の事情に左右されず「本人がどう生きたいか」に専念できるのが大きなメリットです。
転職活動を急がずに「自分が将来どうありたいか」を整理してからエージェントを利用する流れにすれば、ミスマッチを防ぎやすくなります。短期的な求人紹介を求めるのか、それとも長期的なキャリア設計を優先するのか、自分のニーズを踏まえて選ぶことが大切です。
コーチと相性が合わない場合もある
キャリアコーチングは対話を中心に進めるため、コーチとの相性が成果を左右しやすい特徴があります。
考え方やコミュニケーションのスタイルが合わないと、本音を話しにくく効果を実感しづらいこともあります。体験セッションを活用して自分に合うコーチを見極めるようにしましょう。
キャリアコーチングが向いている人の特徴とは
キャリアコーチングは誰にとっても有効ではありません。
特に効果を発揮しやすいのは「何から始めればよいか分からない人」「キャリアアップに不安がある人」「行動が不明瞭な人」です。
当てはまる点があれば、コーチングを受けることで得られる気づきや行動変化が大きくなるでしょう。
何からはじめればいいのかわからない
キャリアの方向性を考える際に、最初の一歩をどう踏み出せばよいか分からない人は多いものです。
キャリアコーチングでは現状を整理し、価値観や強みを明確にすることで優先すべき行動を見つけられます。漠然とした不安を抱える人にとって、具体的な行動指針を得られるのは大きなメリットです。
キャリアアップに不安がある
「今のままで成長できるのか」「転職すべきか」など、キャリアアップに関する不安を抱える人にも適しています。
コーチとの対話を通じて未来のキャリア像を描き直し、必要なスキルや経験を逆算して整理することも可能。不安を前向きな課題に変えることで、自信を持った行動につながるでしょう。
目標達成に向けた必要な行動が不明瞭
目標を持っていても、具体的にどんな行動を取ればよいか分からない場合があります。
しかし、キャリアコーチングではゴールと現状のギャップを明確にし、実現可能なステップの設計が可能です。その結果、やるべき行動が具体化し、日々の努力が将来につながる感覚を得やすくなります。
おすすめのキャリアコーチングサービス9選
キャリアコーチングといってもサービスごとに特徴や対象者は異なります。ここでは主要な9つを紹介します。
- 自分らしく:認知科学にもとづき「wantto」と強みを明確化。人生の方向性に迷う人や自己肯定感を高めたい人に向いています。
- ポジウィルキャリア:理想の人生設計から逆算するスタイル。漠然とした不安を行動に変えたい人におすすめです。
- マジキャリ:後悔しないキャリア選択を掲げるサービス。初めての転職や自分の軸を持った働き方を望む人に適しています。全額返金保証あり。
- キャリドラ:市場価値向上と年収アップを目的にしたパーソナルトレーニング。長期的にキャリアを築きたい人に効果的です。
- WorX:コーチング・スキルアップ・転職支援を一体化。未経験や異業種に挑戦したい35歳までの人に向いています。
- キャリート:国家資格を持つ専門家が支援。HSPなど繊細な方への理解も深く、安心してキャリアを築きたい人におすすめです。
- me:Rise(ミライズ):AIが相性の良いコーチを紹介。将来の方向性を明確にしたい人や家庭と両立したい人に適しています。
- ZaPASSコーチングキャリア:行動心理学を活用し短期間で成果を実感。計画を立てても行動が続かない人に効果的です。
- きづく。転職相談:転職前提ではなく現職に残る選択肢も含めて相談可能。方向性を整理したい人や強みを明確にしたい人におすすめです。
各サービスの料金や特徴をさらに詳しく比較したい方は、以下の記事をご覧ください。
キャリアコーチングとは自分らしい働き方を選ぶための選択肢
ここまで見てきたように、キャリアコーチングは転職活動のためだけでなく、自分らしい働き方を選ぶための有効なサポートです。
- キャリアコーチングとは、価値観や強みを明確にし長期的なキャリア設計を助けるサービス
- 転職エージェントやカウンセリングとは異なり、求人紹介ではなく自己理解と行動計画に重点を置く
- 自己理解の深掘りやキャリアプラン構築など多くのメリットがある一方、費用や相性には注意が必要
- 現状や将来像に迷いを抱えている人ほど効果を実感しやすい
- 各サービスの特徴を比較し、自分に合ったサポートを選ぶことが重要
キャリアに迷いを感じたときこそ、行動を起こすことが大切です。体験セッションを受けるだけでも新しい気づきにつながります。
そして、科学的なアプローチで思考の仕組みから変化を促す「認知科学コーチング」は特におすすめ。
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